20世紀には地球史観に大きな変革をもたらした二つの発見がなされた。
一つは大陸移動説に端を発するプレートテクトニクスの発見であり、今一つはK-T境界衝突の発見である。
大陸移動説は、アフリカ大陸の西の海岸線と南アメリカ大陸の東の海岸線とがかぎと鍵穴のように一致することから、ドイツの気象学者ウェゲナーが提唱した仮説である。
数億年前には大陸が集合して巨大大陸パンゲアを形成しており、後にこれがローラシアとゴンドというものである。
この仮説は、そのあまりの奇抜さから当時の多くの学者たちから反対された。
提唱者自身、確固たる証拠を見出せないまま、グリーンランドでの地質調査探索中に行方不明となっている。
しかし、現在では、人工衛星を使って年間わずか数cmという大陸の移動速度が正確に測定されている。
そしてマントルの熱帯流がプレートを動かし大陸移動の原動力となっていることまで解明されている。
ウェゲナーの慧眼には脱帽するばかりである。
年間数cmの移動距離であっても、長い年月の後には長い距離を旅することになる。
大陸移動説は、「小さな変化が除々に積み重なって大きな変化となる」という地質学のドグマをまさに具現したものといえる。
20世紀も末になり、このドグマを真っ向から否定するような仮設が出された。
アルヴァレス父子によるK-T境界衝突の仮説である。
ここでK-T境界とは地質層の白亜紀層(K)と第3紀層(T)との間にある厚さ1cmほどの赤っぽい粘土層のことである。
K-T境界に化石は含まれていないが、その直下の白い石灰岩層(白亜紀層)と直上の
赤い石灰岩層(第3紀層)とでは含まれる化石有孔虫の種類がまったく異なる。
これは、K-T境界の形成期にグロビゲリナ層の有孔虫をほぼ絶滅させる何かが起こったことを示す。
アンモナイト、多くの被子植物、そして地球上に1億6000万年ものあいだ君臨した恐竜も同時期に絶滅している。
化石に関する膨大な統計データから、このとき地球上に存在した生物種の76%が絶滅したものと推定されている。
K-T境界が形成された6500万年前に地球上生物を大量絶滅させる大事件が発生したのである。
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